「天気がいいので、公園でひなたぼっこしたかった。」の巻。
・そうだ、日光、浴しよう。
山奥ニート諸氏の住まう都「共生舎」に行ってからというもの、寝ころびながらボケーっとさんさんたる日光をたらたら浴びる気持ちよさを知り、下山し、家で暮らしていると「あー、日光浴してー!」と禁断症状が出るようになっていました。
で、昨日ちょうど間が良く午前9時くらいに目が覚めたので「ちょっくら散歩がてら近所の公園で日光浴でもするか」な~んて勇み足で出かけたのです。
家から歩いて5分で人気のない寂れた、校庭ぐらいの大きさの公園がありまして。
まぁそこであれば「平日の午前中にぷらぷらしている与太者は僕くらいだろう」と安心しきって公園内の丘の上のあたり、小高い階段を上がった休憩小屋にあるベンチに寝っ転がり図書館で借りた本を読みながら2、30分ぷーすかぴーすか日に当たっていたんです。
・修羅場
するとあら不思議。
だれもいないはずの午前中。のどかな公園。
しかし階段を「カツン。コツン。」と踏みしめる音がするではありませんか。
「や、やばい…人が来る!つまり通報される!されなくとも俺がひきこもりであることを一瞬で看破され蔑みの一瞥を喰らい会心の精神負傷は間違いない!エマージェンシー!エマージェンシー!ホラホラ呼んでいるのは野獣先輩ではなくSOS!」
不意打ちに否が応にもパニくります。
まごまごしているうちに、階段を登りきる前に歩みを止めた、しかし上半身が伺える、赤子を抱いた女性とぱったりと目が合ったのです。
「や、やばい輪をかけてやばい!野郎ならまだお互いに暗黙の不干渉を通し助かる見込みがあった!しかし女性は大声を出して助けを求める!周囲を善良で屈強な市民に取り囲まれれば逃げ場はない!もしくは俺という不審者を目視したことによる急性ストレスうんぬんでぶっ倒れかねない!おしまいだ!(僕はSCPかなにか?)」
走馬燈時に発揮されるであろう饒舌な速度で脳みそがギュルンギュルン音を立てて空転をキめた結果、一時運動野が僕の体に指示した命令はなんてこった。
「死んだふり」をすることでした。
手に持っていた文庫本を白い布を顔に被せるが如く、ふはりっ、と置き。
両手を指を絡め胸の真ん中に置き、何事もなかったと暗示を唱える。
穏やかな午前のまどろみに似つかわぬ冷や汗なぞ、なんのその。
背中を預けた頼もしいAI☆BOU「木のベンチ」という給水パッドがぐんぐん吸い取ってしまうでしょう。
「恐れないでしょーたろー!君が生きていた痕跡はあたいが全部消滅させるから!」
なんと親切なベンチ君だろう。
きっと家にある外付けハードディスクドライブにしこたま詰め込んだアレなデータ群をも跡形もなく吸いつくしてくれる…
今生にもはや後顧の憂いはありません。
「きれいだろ、死んでるんだぜ。」
いないはずの双子の兄弟が彼女にやさしく漏らす声があたかも聞こえてきそうです。
その七転八倒を一部と言わず始めから終りまで、余すことなく目にしたであろうミズは静かに、そして穏やかに、今しがた憩いを求めて上ってきたであろう階段に向けて踵を返されました。
きっと土壇場で時間制限性の選択ウィンドウでぎりぎりにならないと現れない、三つ目の選択肢
「通報不可避」
「卒倒不可避」
→「そっとしておこう…」
を選択してくれたのでしょう。
公園の砂利は尽きるとも、彼女の配慮へ、感謝は尽きまじ。
無事彼女が立ち去られたことを確認してから、そそくさと僕も岐路につきました。
おうちに着いてから飲んだ水道水のおいしいことおいしいこと…
・まとめ
住宅地の公園は、
午前中は赤子連れの母親が散歩をし、昼過ぎからは幼稚園帰りの母と子が集う。
夕方からは勤め人のストレッチ場と化すようです。
赴くならば注意がいります。
なお都内の人口過密地域の公園は時間帯問わず常に人がいるため肩身の狭い思いをしなくてよいでしょう。逆に常に人がいるとアレな現象も起こりますが。
以来僕は自宅の玄関先に寝ころんで日光浴をするようになりました。(一日経過時点)
不都合なところもありますが、まぁそれはそれで。
それでは、皆様もお気をつけ遊ばせ。ごきげんよう。